情報メディア学会: Japanese Society for Information and Media Studies
更新日[2011.10.13]

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第10回 研究大会 が開催されました 【PDFファイル

■ 大会開催報告

 2011年6月25日(土)に,東京大学・福武ホールラーニングシアターにおいて,「ロボットと情報メディアの未来」を基調テーマにして,第10回研究大会を開催しました.参加者数は,正会員30名(但し,講演者・パネリスト3名を含む),非会員13名(但し,パネリスト2名,展示説明員4名を含む),学生22名の合計65名でした.
 基調テーマに基づき,午前中には坂元昂氏(東京未来大学学長/情報メディア学会初代会長)に,「情報メディア学会を巡る内外の研究・実践の情況 〜学会設立前後の情況と未来への展開〜」と題した基調講演をいただきました.「多様なメディアを研究開発しようとする学会をつくりたい」という学会黎明期のエピソードに始まり,さまざまな情報メディアを活用した人材の育成,インターネットの教育効果,e-Learningによる教育観の変換,ネットワーク学習資源への支援活動など,今後の情報メディアの展望について,さまざまな視点から示唆に富むお話をいただきました.また,「伝統的な対面教育は,概念的にはネットワーク教育の一部である」との見解のもとに,今後はe-Learningが学習の中心となり,対面学習がその一部分になるという予測も提示していただきました.
 午後には,西垣通氏(東京大学教授)をコーディネータ,池内克史氏(東京大学教授),谷口忠大氏(立命館大学准教授),西兼志氏(東京大学助教)の3名をパネリストとして,「ロボットは友だちになれるか?」をテーマとしたシンポジウムを開催しました.
 まずは池内氏より,「ロボットとは何か?」と題したご講演をいただきました.「目的とする操作・作業をロボットが自動的に行う」ことの取り組みに始まり,「ロボット自身が動きを生成できないか」「動きライブラリからアドリブを生成できないか」など,長年のロボット研究をもとにしたご発表内容でした.ロボットを繰り返し作業のための機械的なパートナーに位置づけるのではなく,ロボットそのものに人間と同じような心があるように捉えていくことが必要とご指摘いただきました.
 次に谷口氏より,「記号創発システムへの構成論的アプローチ」と題したご講演をいただきました.コミュニケーションするロボットや,ロボット自身による自律的な概念形成のモデルについてご説明をいただきました.その上で,外部に存在する他者がロボットの内部系に直接アクセスする「記号過程の創発」の状態から,「記号創発システム」へと繋がっていく流れについて,これからのロボット研究への視点を提示していただきました.
 さらに西氏より,「ロボットはなぜメディア学の問題になるのか」と題したご講演をいただきました.「ロボットは友だちになれるか」というテーマで,人間とロボットとが「対峙・対決」する傾向にある西洋的な観点と,それらが「友だち化」することが多いという日本的な観点との違いに言及いただいた上で,「ロボット論」や「メディア論」を概観するようなご説明をいただきました.
 3名のパネリストからひと通りのご講演をいただいた後に,コーディネータの西垣氏を交えたディスカッションが行われました.西垣氏からは主に,(1)ロボットのロボットたる所以とは何か? (2)ロボットの魅力とは何か? (3)高齢者介護にロボットは有効なのか? という三つの質問が投げかけられました.
 それらの質問に対し,池内氏はロボットの研究を進めていた当初を回想し,「有用性」「知性」「情動性」といった性質を考慮にいれていたが,その際に「有用性」を深く追求するあまり,「知性」についての検討が不十分だったというご回答をいただきました.また,谷口氏からは,まずは人間とロボットとの関係性の構築を行った上で,それから「知性」の面の検討に移ればよい,とのご見解をいただきました.さらに西氏からは,新たなコミュニティを形成していくような,人間とロボットとのコミュニケーションの可能性に言及していただきました.
 シンポジウムの終了後には,展示出展機関によるプロダクトレビューが行われ,その後にポスター発表へと移りました.今回のポスター発表には全部で7件の応募がありましたので,まずはポスターの発表者による概要紹介のライトニングトークが行われました.
 その後は,全体の懇親会の時間と並行する形で,ポスターの展示閲覧が行われました.参加者による投票をいただき,それによって最優秀ポスター発表を選びました.今回の最優秀ポスター発表には,千葉工業大学の遠山正朗氏(ほか13名)による,「EDINETを活用したゲーミングシミュレーションによる社会人基礎力の育成」が選ばれました.

■ 大会プログラム概要

09:30     受付開始
10:00〜10:10 開式,会長挨拶
10:10〜11:30 記念講演「情報メディア学会を巡る内外の研究・実践の情況
             〜学会設立前後の情況と未来への展開〜」
        講師 坂元 昂 氏(東京未来大学学長/情報メディア学会初代会長)
11:30〜12:00 総会
13:00〜15:00 シンポジウム
       「ロボットは友だちになれるか?」
         パネリスト
          池内 克史 氏(東京大学)
          谷口 忠大 氏(立命館大学)
          西 兼志 氏(東京大学)
         コーディネータ
          西垣 通 氏(東京大学)
15:15〜15:40 プロダクトレビュー(展示出展機関による報告)
15:40〜17:00 ポスター紹介ライトニングトーク(ポスター発表者による概要紹介)
17:00〜18:20 展示閲覧・ポスター発表 +懇親会
18:30     閉会

■ ポスター発表

1)塩基配列データに付与されたアノテーション情報からの類似関係の抽出
  天野晃(理化学研究所, 農業生物資源研究所)・石川大介(国立情報学研究所)

2)情報社会と高齢社会における情報教育に関する一考察
  遠山恵理子(桜美林大学)

3)文部省管理局長通達雑管第115号を援用した大学図書館における電磁的記録により作成された図書館資源の会計処理に関する私案の提示
  作野誠(愛知学院大学司書課程非常勤講師)

4)需要主導の学際領域の知識創成におけるアーカイブ方法論の可能性
  神山資将(知識環境研究会)

5)医療関係者間のコミュニケーション課題の克服を目的とした,メタ認知に基づく教育・知識共有手法の開発
  神山資将・根立俊恵(知識環境研究会)

6)EDINETを活用したゲーミングシミュレーションによる社会人基礎力の育成
  遠山正朗,佐久間拓也,鈴木詳治,菊川弾,木野田遼,下佐翔,高梨文弥, 高橋諒樹,
  立野悠介,露崎良,増田智彦,山内祥太,山田琢也,関矢聡(千葉工業大学)

7)図書館機能の有効利活用と著作権法制の調和的展望
  金納修一(筑波大学)

■ 出展機関と展示内容

1)【ウエストロー・ジャパン株式会社】http://www.westlawjapan.com/
  法律情報オンラインサービス
  1.『 Westlaw Japan 』
    日本最大の判例収録数を誇る日本法総合オンラインサービスです.
  2.『 Westlaw International 』
    英米法を中心とした世界最大級の外国法総合オンラインサービスです.
2)【独立行政法人 科学技術振興機構】http://www.jst.go.jp/
  『J-GLOBAL(科学技術総合リンクセンター)(http://jglobal.jst.go.jp/)』
  J-STAGE(http://www.jstage.jst.go.jp/)は,日本の優れた研究成果をいち早く世界へ
  発信することを目的として構築されたシステムです.国内学協会の論文誌を電子
  化し,流通させたもので,全文をインターネット上で発信・閲覧することができ
  ます.2011年5月25日現在,ジャーナル733誌,予稿集・要旨集125誌,報告書
  10誌,JST報告書42誌が公開されています.

* 発表資料について

基調講演,パネルディスカッション報告,ポスター発表について,各講師,発表者の予稿を掲載した「情報メディア学会第10回研究大会発表資料」を当日参加者に配付しました.残部がありますので,ご希望の方は事務局にお申し込み下さい.代金1,000円(他に送料を加算)は,発表資料送付時に同封する郵便振込票にてお払い込み下さい.

■ おわりに

この大会の企画と準備は,以下の会員をメンバーとする大会企画委員会が中心となって行われました.これらの方々の多大のご尽力に感謝致します.

 [大会企画委員会]
   委員長 元木 章博 鶴見大学 文学部
   委 員 河島 茂生 聖学院大学 人文学部
   委 員 西  兼志 東京大学大学院 情報学環
   委 員 植松 利晃 科学技術振興事業団 研究基盤情報部
   委 員 橋本  渉 淑徳大学 国際コミュニケーション学部
   委 員 天野  晃 理化学研究所/農業生物資源研究所
   委 員 岡部 晋典 近大姫路大学 教育学部
   委 員 岡野 裕行 皇學館大学 文学部
   委 員 中林 幸子 千里金蘭大学 現代社会学部

   事務局 松林麻実子 筑波大学大学院 図書館情報メディア研究科