情報メディア学会: Japanese Society for Information and Media Studies
更新日[2019.11.19]

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第18回 研究大会 が開催されました 【PDFファイル

■ 大会開催報告

 2019年6月29日(土)に日本事務器株式会社にて,第18回研究大会を開催しました.午前のプログラムでは,基調講演として「ヘルスリテラシーと健康医療情報―公共図書館の健康医療情報提供サービスから考える―」をテーマに,慶應義塾大学名誉教授の田村俊作先生にご講演いただきました.午後のプログラムでは「ヘルスリテラシーと健康医療情報」をテーマとしてシンポジウムを開催,並びに5件のポスター発表が行われました.参加者数は,正会員27名,非会員17名(但し,パネリスト等の3名を含む),学生会員3名,非会員学生5名の合計名でした.

 開会に先立ち,植村八潮会長から挨拶とプログラムのご紹介をいただきました.

 午前は「ヘルスリテラシーと健康医療情報―公共図書館の健康医療情報提供サービスから考える―」というテーマで田村俊作氏による基調講演を行いました.田村氏からは,公共図書館の課題解決支援サービスの一つに位置づけられる「健康医療情報サービス」について,様々な事例を挙げながら,現状やその意義についての知見を述べていただきました.

 まず,健康医療情報を含めた課題解決支援サービスの意義として,一つには医療,法律,ビジネス等,かつて限定的にしか扱ってこなかった領域に踏み込み,公共図書館サービスの範囲を拡大したこと.二つには,サービス視点を提供側から利用側へと転換させ,利用者のニーズに即したサービスが行われるようになった点が指摘されました.  健康医療情報のサービスは,棚づくりからはじめられるが,関心が潜在化している人に向け,「セレンディピティ」と言って棚を見て関心が誘発されるようなものがあることが言及されました.図書館の利点に着眼点を置いた,興味深い指摘であったといえるのではないでしょうか.

 健康医療情報サービスの主な内容としては,棚づくりと展示,情報検索の支援,講演会の開催,相談会の実施,外部イベントへの図書館からの出前が挙げられました.具体的な事例として,がん患者と連携した展示や病名を見出しとした棚づくり,同じコーナーにがん相談支援センターや患者図書室の案内を行うといった様子が紹介され,現場の様子を拝聴することができました.また,講演会と相談会をセットで行うことで,より参加者にとって有意義で実りあるサービスとなる点も指摘されていました.

 多くの図書館での実績についてもふれられ,逗子市立図書館のブックトーク,岡山県立図書館のパスファインダー,埼玉県立久喜図書館のリサーチガイドなどが取り上げられており,実務家や研究者,様々な立場の参加者にとって有意義な講演となりました.このような活動をもとにさらなるサービス対象者の拡大について,高齢者や認知症患者,障碍者,子ども等へ向けた展開への動きも高まっているという事が指摘されました.

 最後に,「ヘルスリテラシー」の多面性という観点から,あらゆる人々を対象として,必要な情報を得る機会を与え,潜在化したニーズにも気づきの機会を提供する今後の公共図書館の貢献の可能性が論じられており,参加者が改めて検討する場ともなりました.

 基調講演の後,2019年度の総会が開催されました.

 午後は「ヘルスリテラシーと健康医療情報」をテーマに日向良和氏(都留文科大学共通教育センター准教授)をコーディネータに,粟本安津子氏(株式会社メディカ出版東京オフィス長),田村俊作氏(慶応大学名誉教授),舟田彰氏(川崎県立宮前図書館課長補佐)の3名をパネリストに迎え,今後の図書館における健康医療情報提供の目標の一つである,「利用者のヘルスリテラシーの向上」についての課題を探り,「公共図書館の利用者は『健康医療情報』というコーナーに何を期待するのか?」という会場への問いを含めたシンポジウムを開催しました.

 最初に,パネリストの粟本氏から図書館を通じた一般向けの健康医療情報出版の例として,「子どもたちに届ける健康医療情報」を題したご報告をいただきました.病気に関する情報だけでなく,医療従事者や薬物乱用防止に関する内容も扱っており,ヘルスリテラシー教育が子供にこそ重要であるという視点についてもお話がありました.続いて,舟田氏より健康医療情報を収集,提供する側からの実例や課題についてご報告をいただきました.図書館が人とのつながりの場であること,地域資源を所有している場であることについて言及され,今後の図書館・福祉・市の横のつながりの重要性が指摘されました.

 その後,基調講演者の田村氏とコーディネータの日向氏を交えてのディスカッションが行われ,会場から寄せられた質問に対しても議論があり,改めてヘルスリテラシーと今後のサービス展開の多様性について感じさせられる機会となりました.

 シンポジウム終了後に行われたポスター発表は5件あり,ライトニングトーク(口頭発表)が行われた後,ポスターを囲んでの意見交換,会員の投票によるが行われ,最優秀ポスター発表が選出,表彰されました.

 ポスター発表者によるライトニングトークでは,岡野裕行氏(皇學館大学)による「文学館の広報活動を支援する―館報『日本近代文学館』を事例として―」,佐藤正惠氏(千葉県済生会習志野病院),渡邊清高氏(帝京大学),北澤京子氏(京都薬科大学),三輪眞木子氏(放送大学)による「各ライフステージにおけるヘルスリテラシー向上のためのメディアドクター指標活用の試み」,相馬大悟氏(東京電機大学大学院),矢口博之氏(東京電機大学)による「出版社における電子書籍・デジタル雑誌のビジネス動向調査(2018年)」,岡部晋典氏(愛知淑徳大学),飯尾健氏(京都大学),赤山みほ氏(八洲学園大学),逸村裕氏(筑波大学)による「人々は科学的合理性に著しく反する図書館の蔵書をどう見ているのか-Web調査を手がかりに-」,渡辺哲成氏,阿加井愛香氏,齊藤貴志氏,小川真樹氏(以上日本事務器株式会社)による「司書課程授業でのクラウド型図書館システムの教育活用」の発表が行われました.

 その後,ポスター掲示コーナーにて,発表者と参加者によるディスカッションの場が設けられ,活発な意見交換が行われました.続いて会員参加者の投票により最優秀発表の選出が行われ,佐藤正惠氏(千葉県済生会習志野病院),渡邊清高氏(帝京大学),北澤京子氏(京都薬科大学),三輪眞木子氏(放送大学)による「各ライフステージにおけるヘルスリテラシー向上のためのメディアドクター指標活用の試み」が最優秀発表に決定し,植村会長より表彰されました.最後に,長塚隆副会長より閉会挨拶があり,研究大会の幕を閉じました.

■ 大会プログラム概要

10:00

受付開始

10:30

開会挨拶

10:35

基調講演
「ヘルスリテラシーと健康医療情報―公共図書館の健康医療情報提供サービスから考える―」
  田村俊作氏(慶応義塾大学名誉教授)

12:00

総会,昼食

13:30

シンポジウム
「ヘルスリテラシーと健康医療情報」
  コーディネーター:日向良和氏(都留文科大学准教授)
  パネリスト:田村俊作氏(慶応義塾大学名誉教授)
  舟田彰氏(川崎市立宮前図書館)
  粟本安津子氏(株式会社メディカ出版)

15:45

ポスターライトニングトーク

16:45

ポスターディスカッション

17:30

表彰式,閉会挨拶


■ ポスター発表

  1. 文学館の広報活動を支援する ―館報『日本近代文学館』を事例として―
     岡野裕行(皇學館大学)

  2. 各ライフステージにおけるヘルスリテラシー向上のためのメディアドクター指標活用の試み
     佐藤正惠(千葉県済生会習志野病院),渡邊清高(帝京大学),北澤京子(京都薬科大学),三輪眞木子(放送大学)

  3. 出版社における電子書籍・デジタル雑誌のビジネス動向調査(2018年)
     相馬大悟(東京電機大学大学院),矢口博之(東京電機大学)

  4. 人々は科学的合理性に著しく反する図書館の蔵書をどう見ているのか-Web調査を手がかりに-
     岡部晋典(愛知淑徳大学),飯尾健(京都大学),赤山みほ(八洲学園大学),逸村裕(筑波大学)

  5. 司書課程授業でのクラウド型図書館システムの教育活用
     渡辺哲成,阿加井愛香,齊藤貴志,小川真樹(日本事務器株式会社)

* 発表資料について

パネルディスカッション,ポスター発表について,発表者の予稿を掲載した「情報メディア学会第18回研究大会発表資料」を当日参加者に配付しました.残部がありますので,ご希望の方は 事務局 にお申し込みください.代金1,000円(他に送料を加算)は,発表資料送付時に同封する郵便振込票にてお払い込みください.

最優秀ポスター発表受賞者インタビュー

各ライフステージにおけるヘルスリテラシー向上のためのメディアドクター指標活用の試み

 佐藤正惠(千葉県済生会習志野病院)、渡邊清高(帝京大学)、北澤京子(京都薬科大学)、三輪眞木子(放送大学)

1. 最優秀ポスター発表受賞おめでとうございます.受賞について一言お願いします.

2. どういった経緯で今回の研究を行うことになったのでしょうか?

3. ポスター発表の研究概要について教えてください.

4. デザイン面などで工夫した点を教えてください.

5. ポスター制作にあたっての苦労話やエピソードなどありましたらば,教えてください.

6. ポスター発表時の会場の人からの反応はいかがでしたでしょうか?

7. ポスター発表の論文発表のご予定は?

■ おわりに

この大会の企画と準備は,以下の会員をメンバーとする大会企画委員会が中心となって行われました.これらの方々の多大のご尽力に感謝致します.また,企画委員のオブザーバとして,会場担当である日本事務器株式会社の阿加井愛香氏にも参加いただきました.

[大会企画委員会]
 委員長 石川 敬史 十文字学園女子大学
 委 員 天野  晃 国立研究開発法人 物質・材料研究機構
 委 員 岡部 晋典 愛知淑徳大学
 委 員 佐藤  翔 同志社大学
 委 員 千  錫烈 関東学院大学
 委 員 角田 裕之 鶴見大学
 委 員 長谷川幸代 中央大学
 委 員 日向 良和 都留文科大学