第9回 研究大会 が開催されました 【PDFファイル】
■ 大会開催報告
2010年7月3日(土),第9回研究大会が,東京大学・山上会館にて開催されました.参加者数は,正会員32名,学生会員21名,非会員36名(学生も含む)の合計87名でした.
今大会では,「ナビゲータとしての情報コンシェルジュ : 個別のニーズに合わせた情報提供」を基調テーマにして研究大会を開催しました.基調テーマに基づいて,九州産業大学准教授の稲永健太郎先生に,「情報コンシェルジュと情報品質保証」について基調講演をいただきました.これからの情報発信について考えるにあたり,本講演の新しい基本的概念として「情報コンシェルジュとは,個別の要望(ニーズ)に応えるべく,プロフェッショナリズムに基づき情報やサービスを提供する主体である」があります.氏が論じている「コンシェルジュ型情報発信」は,情報の受信者の利益や満足度を優先した情報発信であり,情報の”品質”が重要である,ともしていました.加えて,「情報品質保証」のための取り組み(情報エスクロー等)についても,お話しいただきました.本講演は,午後のシンポジウムの概説という意味合いもあり,大変丁寧にお話を頂戴できました.
午後には,「情報コンシェルジュの意義と可能性」をテーマに,シンポジウムを開催しました.昨今のICT社会における情報の流通量は,増加の一途をたどっています.しかし,多くの問題解決が行われる際に利用される情報というのは「量」よりも「質」が重要であります.そこで,情報受信者の満足を優先した場合の情報発信者として意識する「質」について,各業界のパネリストから「質を意識した情報発信」についてご講演を頂戴しました.
先ずは,ホテル業界から,ザ・プリンスパークタワー東京に勤務され,日本コンシェルジュ協会副会長の芝田尚子氏より,ホテル・コンシェルジュとして,お客様と対面し,要望にあった最も有益な案内を提供するための技術や条件,役割について触れていただいた.
次に,図書館業界より,千代田区立千代田図書館に設立された読書振興センターのセンター長・神原文江氏と千代田区立千代田図書館コンシェルジュの押田径子氏より,図書館の利用をサポートする「コンシェルジュサービス」について,ご説明いただきました.図書館コンシェルジュは,千代田図書館の5つの機能コンセプトのひとつである「千代田ゲートウェイ」の機能を担っています.それらサービスは館内にとどまらず,千代田区全体に及んでいます.日本初の図書館コンシェルジュの活動や導入した効果について,ご紹介いただいた.
続いて,コンピュータ・システム業界より,再度,九州産業大学准教授の稲永健太郎先生に,情報品質保証の取り組みについて,基調講演に加えて「情報コンシェルジュ」を支える仕組みである「情報エスクロー」を詳細にご紹介いただいた.昨今のリコメンド機能を搭載したシステムとの違いや,その実現に向けた課題についても,話題の提供をいただいた.
最後に,鶴見大学文学部准教授の情報メディア学会事務局長である元木章博氏のコーディネートにより,ディスカッションが行われた.会場から幾問かの質問を受け,パネリストらから回答をいただいた.多くの情報が容易に手に入る中で,今後,情報コンシェルジュとしての我々は,お客様(情報受信者)のニーズ(情報の質に依存)に応えるホスピタリティを持つ(もしくは,システムに持たせる)必要があるだろう,と締めくくりました.
総会の事項ではありますが,特筆することとして,情報メディア学会名誉会員3名が理事会より推薦され,総会にて了承されました.当日は,田畑孝一氏に来場いただくことができ,西垣会長より認定証が手渡されました.
また,「ナビゲータとしての情報コンシェルジュ : 個別のニーズに合わせた情報提供」をテーマとした講演やシンポジウムを軸として,情報・メディアに関する多様な観点からの研究報告と,各種技術的成果の報告全12件を行う機会となりました.
ポスター発表では,参加者の投票により最優秀ポスター発表が選ばれました.最優秀ポスター発表は,木下朋美氏(筑波大学大学院図書館情報メディア研究科),岡部晋典氏(千里金蘭大学)「公共図書館の選書における事前選定の実態分析 〜図書館流通センターとの関係を通して〜」が表彰されました.
■ 大会プログラム概要
09:30 受付開始
10:00〜10:10 開式,会長挨拶 西垣通氏(情報メディア学会会長)
10:10〜11:30 基調講演「情報コンシェルジュと情報品質保証」
講師 稲永健太郎氏(九州産業大学)
11:30〜12:00 総会
13:10〜14:50 シンポジウム
「情報コンシェルジュの意義と可能性」
パネリスト
芝田尚子氏(ザ・プリンス パークタワー東京
/日本コンシェルジュ協会副会長)
神原文江氏,押田径子氏
(千代田区立千代田図書館/読書振興センター)
稲永健太郎氏(九州産業大学)
コーディネータ
元木章博(鶴見大学)
14:45〜15:30 プロダクトレビュー(展示出展機関による報告)
15:30〜16:40 ポスター紹介ライトニングトーク(ポスター発表者による概要紹介)
16:45〜17:20 展示閲覧・ポスター発表 + 交流会
17:30 閉会
■ ポスター発表
1)諸外国における録音図書サービスと著作権法の現状
松本圭以子(筑波大学図書館情報メディア研究科)
2)文学領域の古書資料流通
〜図書館や文学館における資料収集と古書店の販売活動〜
岡野裕行(法政大学)
3)公共図書館の選書における事前選定の実態分析
〜図書館流通センターとの関係を通して〜
木下朋美(筑波大学)
岡部晋典(千里金蘭大学)
4)情報メディアを活用したマネジメント教育に関する一考察
関矢聡(千葉工業大学)
遠山正朗(千葉工業大学)
5)教科情報担当教員の人材育成について
〜教員研修機関の調査から〜
須藤崇夫(埼玉県立総合教育センター)
平久江祐司(筑波大学大学院図書館情報メディア研究科)
6)JST事業成果可視化分析のための可視化ツールの開発
橋本定幸 ((独)科学技術振興機構)
落合圭((独)科学技術振興機構)
山崎雅和 ((独)科学技術振興機構)
浜中寿 ((独)科学技術振興機構)
治部眞里((独)科学技術振興機構)
7)ドキュメンタリー映像分析の構成主義的アプローチ
〜サイバー空間における市民メディア分析のために〜
石田翼(東京大学)
8)デジタル化がもたらすメディアの将来的可能性と法的諸問題
〜機器と媒体の動向,最近の話題を交えながら〜
金納修一(筑波大学)
9)電子メール等の情報コミュニケーションに関する問題点教育手法に関する考察
森屋裕治(名古屋女子大学短期大学部)
10)メディアコンテンツの理解促進に及ぼすプライミング効果と
ユーザー操作性の影響
行場絵里奈(東北大学大学院教育情報学教育部)
11)メディアと情動〜1930年代文化映画にみる情動喚起技術について〜
難波阿丹(東京大学)
12)演奏する身体と意識の在り方
藤井保文(東京大学)
■ 出展機関と展示内容
1)【独立行政法人 科学技術振興機構】http://www.jst.go.jp/
『J-GLOBAL(科学技術総合リンクセンター)(http://jglobal.jst.go.jp/)』
2)【株式会社サンメディア】http://www.sunmedia.co.jp/
『学術研究支援・マネジメントツール RefWorks(レフワークス)』
3)【ウエストロー・ジャパン株式会社】http://www.westlawjapan.com/
法律情報オンラインサービス
1.『 Westlaw Japan 』
2.『 Westlaw International 』
3.『 Westlaw China 』
4)【スエッツインフォメーションサービス株式会社】http://www.swets.co.jp/
『スエッツワイズポートフォリオ』