情報メディア学会: Japanese Society for Information and Media Studies
更新日[2012.08.26]

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第11回 研究大会 が開催されました 【PDFファイル

■ 大会開催報告

2012年7月7日(土)に,筑波大学・東京キャンパス文京校舎において,「重なり合う実空間と電子空間:ラーニングコモンズ×ディスカバリサービス」を基調テーマにして,第11回研究大会を開催しました.参加者数は,正会員40名,非会員45名(但し,パネリスト,展示説明員8名を含む),学生12名の合計97名でした.

基調テーマに基づき,午前中には竹内比呂也氏(千葉大学付属図書館長/アカデミック・リンク・センター長)に,「アカデミック・リンクは何をめざしているか 高等教育における図書館を基盤とした新たな学習環境の構築に向けて」と題した基調講演をいただきました.日本の大学図書館における学習支援の歴史を振り返った後,千葉大学が行っている学習支援の取り組みをご紹介いただきました.特に,教員と図書館系職員,そして大学生が密接に連携しているアカデミック・リンクが,大学の教育改革に取り組んでいる様子を具体的にお話しいただきました.また,単なるラーニングコモンズを超え,本のデジタル化を超え,授業のデジタル配信を超え,図書館の改革を超え,そして単なる千葉大学の教育改革を超えてアカデミック・リンクを広めていきたいという,今後の展望も示していただきました.

午後には,宇陀則彦氏(筑波大学図書館情報メディア系)をコーディネータ,久保山健氏(大阪大学附属図書館),天野絵里子氏(九州大学附属図書館),安東正玄氏(立命館大学図書館)の3名をパネリストとして,「重なり合う実空間と電子空間:ラーニングコモンズ×ディスカバリサービス」をテーマとしたシンポジウムを開催しました.

まずは天野氏より,「ラーニングコモンズ ディスカバリサービス」と題してご講演いただきました.自律的学習者の育成を行うことが理想の図書館であるとした上で,「情報が発見されやすいようにする」サービスであるディスカバリサービスや,学生による企画が持ち込まれるほど活発なラーニングコモンズの実例をご紹介いただきました.

次に久保山氏より,「ラーニングコモンズの先〜重なり合うのは人なのか〜」と題したご講演をいただきました.ラーニングコモンズの要素や国内外の事例の紹介の後,ラーニングコモンズが図書館にある意味についてご説明をいただきました.その上で,「ラーニングコモンズ×ディスカバリサービス」ではなく,「(情報資源+ITツール+場所+人的支援)×グループ学習の教育的効果=図書館のラーニングコモンズ」「(情報資源+ITツール)×利用効率=ディスカバリサービス」という式を新たに提示していただきました.

最後に安東氏が,「大学図書館が『学び』を変える」と題したご講演をしてくださいました.大学の置かれている情勢と大学生の置かれている状況がそれぞれ変化してきたことに言及した上で,ラーニングコモンズ,授業,ディスカバリサービスを通して,図書館が大学生に「学ぶ喜び」を教えるという新しいスタイルについてお話しいただきました.

3名のパネリストからひと通りのご講演をいただいた後に,コーディネータの宇陀氏を交えたディスカッションが行われました.宇陀氏からは主に,@ラーニングコモンズを図書館で行う意義は何か?実際の効果はどうだったのか? Aラーニングコモンズに新しい什器は必要なのか? Bディスカバリサービスと従来の図書館で使われている検索ツールの違いは何か?なぜディスカバリサービスを導入するのか? という三つの質問が投げかけられました.

それらの質問に対し,3名のパネリストの方々は,各大学の状況に即した独自のラーニングコモンズを作り上げていることを,具体例を挙げつつご回答されました.また,天野氏は,「カード目録からOPAC検索,そして図書館員の共同や横断検索というような蔵書検索の発展は利用者の効率を上げてきた」と述べられ,その連続した先に,ディスカバリサービスがあるとのご見解を示していただきました.安東氏は,“検索に引っかからなければなかったことにしてしまう”学生と,様々なデータベースが使用されていない図書館の実情に言及した上で,一度に多くのヒット件数が得られるディスカバリサービスは,学生が必要な資料を探し出しやすくするものであるため有効だとのご見解をいただきました.フロアからは,「ラーニングコモンズやディスカバリサービスは図書館の取り組みを大学内に『見える化』するのか」,「導入した効果はどのように測定するのか」,といった声も上がり,活発なディスカッションが展開されました.

シンポジウムの終了後には,展示出展機関によるプロダクトレビューが行われ,その後にポスター発表へと移りました.今回のポスター発表には全部で9件の応募がありましたので,まずはポスターの発表者による概要紹介のライトニングトークが行われました.

その後は,全体の懇親会の時間と並行する形で,ポスターの展示閲覧が行われました.参加者による投票をいただき,それによって最優秀ポスター発表を選びました.今回の最優秀ポスター発表には,筑波大学大学院図書館情報メディア研究科の平山陽菜氏と佐藤翔氏,筑波大学情報学群知識情報・図書館学類の山下聡子氏,近大姫路大学教育学部の岡部晋典氏による,「図書館における非正規職員の意識調査:直営/指定管理の異動を軸としたインタビューを通じて」が選ばれました.

本大会では,一部のプログラム(基調講演・シンポジウム・プロダクトレビュー)がUstream中継されました(http://www.ustream.tv/channel/jsims-annual-conference-11th).これは当学会初の試みであり,基調講演のこれまでの視聴数は1,043となっております(2012年8月23日現在).

■ 大会プログラム概要

09:30     受付開始
10:00〜10:05 開式,会長挨拶
10:05〜11:40 基調講演「アカデミック・リンクは何をめざしているか
      高等教育における図書館を基盤とした新たな学習環境の構築に向けて」
         講師 竹内 比呂也 氏
         (千葉大学付属図書館長/アカデミック・リンク・センター長)
11:40〜12:00 総会
13:00〜15:40 シンポジウム
       「重なり合う実空間と電子空間:
        ラーニングコモンズ×ディスカバリサービス」
         パネリスト
          久保山 健 氏(大阪大学附属図書館)
          天野 絵里子 氏(九州大学附属図書館)
          安東 正玄 氏(立命館大学図書館)
         コーディネータ
          宇陀 則彦 氏(筑波大学図書館情報メディア系)
15:40〜15:55 プロダクトレビュー(展示出展機関による報告)
15:55〜17:10 ポスター紹介ライトニングトーク(ポスター発表者による概要紹介)
17:10〜18:20 展示閲覧・ポスター発表 +懇親会
18:30     閉会

■ ポスター発表

1)雑誌間被引用引用行列に基づく学術分野形成のシミュレーション
   天野晃(理化学研究所,農業生物資源研究所),児玉閲(東邦大学),
   小野寺夏生(筑波大学)

2)作家のゆかり ─文学資料の系譜─
   岡野裕行(皇學館大学文学部国文学科)

3)知識生産様式の異なる組織間を横断した,教育・研究(知識創造)ポートフォリオシステム
   神山資将(一般社団法人知識環境研究会),
   池田満(北陸先端科学技術大学院大学)

4)日本における情報化および情報化に対する心理に関する一考察
   遠山恵理子(目白大学)

5)2011年東北地方太平洋沖地震に関する被災地域居住者と被災地域以外居住者の
情報収集方法とメディア使用傾向の違い
   行場絵里奈(東北大学大学院工学研究科,日本学術振興会特別研究員)

6)デジタルコンテンツの著作権管理 −放送と通信の概念統合を背景に−
   金納修一(筑波大学大学院図書館情報メディア研究科)

7)ホロニック・マネジメントのコミュニケーション機能の補完 −HACS モデル(基礎情報学)からのアプローチ−
   辻本篤(東京大学大学院情報学環 客員研究員)

8)WebOPAC へのレコメンド機能の付加と予期せぬ接触
   河島茂生(聖学院大学)

9)図書館における非正規職員の意識調査:直営/指定管理の異動を軸としたインタビューを通じて
   平山陽菜,佐藤翔(筑波大学大学院図書館情報メディア研究科),
   山下聡子(筑波大学情報学群知識情報・図書館学類),
   岡部晋典(近大姫路大学教育学部)

■ 出展機関と展示内容

1)EBSCO  http://www.ebsco.co.jp/
 EBSCO Discovery Service (EDS) とは,図書館内外の様々な情報資源から,これまでにない膨大な量のメタデータを収集(ハーベスト)して搭載し,それらのデータを単一のインターフェースで検索・閲覧可能な情報探索サービスです.
 オンラインでも紙媒体でも,タイトルレベルでも記事レベルでも,外国語文献でも日本語文献でも,出版物の形態も問わないあらゆるリソースを対象とした検索エンジンで,欲しい情報を簡単に素早く利用者に提供します.

* 発表資料について

基調講演,パネルディスカッション報告,ポスター発表について,各講師,発表者の予稿を掲載した「情報メディア学会第11回研究大会発表資料」を当日参加者に配付しました.残部がありますので,ご希望の方は事務局にお申し込み下さい.代金1,000円(他に送料を加算)は,発表資料送付時に同封する郵便振込票にてお払い込み下さい.

■ おわりに

この大会の企画と準備は,以下の会員をメンバーとする大会企画委員会が中心となって行われました.これらの方々の多大のご尽力に感謝致します.

 [大会企画委員会]
   委員長 河島 茂生 聖学院大学 政治経済学部
   委 員 天野  晃 理化学研究所/農業生物資源研究所
   委 員 植松 利晃 科学技術振興機構 知識基盤情報部
   委 員 岡野 裕行 皇學館大学 文学部
   委 員 中林 幸子 東北文教大学短期大学部 総合文化学科
   委 員 野村  至 日本情報経済社会推進協会 電子情報利活用推進部
   委 員 松本 直樹 大妻女子大学 社会情報学部
   委 員 椋本  輔 横浜国立大学 教育人間科学部
   委 員 元木 章博 鶴見大学 文学部

   事務局 松林麻実子 筑波大学図書館情報メディア系