第21回研究大会が開催されました
■ 大会開催報告
2022年6月25日(土)に、情報メディア学会第21回研究大会をオンライン開催いたしました。前年度、前々年度に続きオンラインのみでの開催となりました。今年度は社会情報学会との合同企画セッションおよび本学会単独セッションの2部構成での開催となりました。
今年度大会の総合司会はすべてのセッションを通して下山佳那子氏(八洲学園大学)により執り行われました。開会のご挨拶は情報メディア学会会長角田裕之氏および社会情報学会会長櫻井成一朗氏の両名に頂きました。
■ 基調講演
情報メディア学会・社会情報学会 合同企画セッションとして、基調講演「文系情報学の統合的協調にむけて」を、西垣通氏(東京大学名誉教授,元情報メディア学会会長,元社会情報学会理事)により講演頂きました。
西垣氏は、まず、文系情報学(と理系情報学)という切り口で話しだされました。この対比は、西垣氏が、自身が理系情報学出身であるとし、この視点より文系情報学を語っていただいた形となりました。
西垣氏がつぎに話題にされたのは日本がDXにおいて遅れているという点であり、もともと日本は高いIT技術を持っていたはずなのに、なぜDXでは遅れているのかについての様々な考察を述べられました。
考察ではメタバースなどの例も引き合いに出されながら、文化と実装(技術)のマッチングを一つの要素として指摘されました。
また、西垣氏はその後視点を移し、情報科学の観点で「文系情報学」「理系情報学」を語られ、サイバネティックパラダイムの流れを汲むオートポイエーシス理論を基盤とする基礎情報学を紹介されました。
一方、西垣氏は情報科学と図書館情報学との関連にも触れられ、前述のサイバネティックパラダイム(およびコンユーティングパラダイム)を引き合い出されながら、書誌コントロールやインデクシングについてもご自身の考えを語られました。
その後の質疑応答では、活発な討議が行われました。
■ シンポジウム
午後には、引き続き情報メディア学会・社会情報学会 合同企画セッションとして、シンポジウム「社会情報と情報メディア ~図書館情報学を架橋に~」が行われました。
進行は河島茂生氏(青山学院大学)、コメンテーターは後藤嘉宏氏(筑波大学)、パネリストには河井孝仁氏(東海大学)、長谷川幸代氏(跡見学園女子大学)、西田洋平氏(東海大学)を迎えるパネルディスカッションの形式で行われました。
最初に河島氏による導入が行われ、河井氏、長谷川氏、西田氏のパネリスト3人の発表、最後にコメンテーターである後藤氏のコメントが行われる構成となりました。
河井氏の発表は、シティプロモーションを主題とするもので、地理的な計量と地域の参画や活動量(地域推奨量や地域参加量)の計量より地域活動を捉えることでシティプロモーションにつなげるというもので、定量化の詳細についても説明いただきました。
長谷川氏の発表は、社会システムとしての図書館という観点より、図書資源と情報資源、図書館学と図書館情報学といった対を考察することにより、図書館情報学のこれからを考えるというものでした。
西田氏の発表は、情報そのものを研究対象とするもので、オートポイエティックシステムをその基盤と捉え、BZ反応のような物理・化学的な現象から社会現象までを、一貫した理論で考察し直すものでした。また、西田氏は本共催に合わせた形で「共催」(協働)をもテーマとし、ご自身の研究だけでなく本共催のための特別な内容を語っていただきました。
最後に後藤氏より各パネリストの方々への質問・コメントを述べられ、再度パネリストの方々より回答をいただく形で終了しました。また、後藤氏のコメントには図書館情報大学の大学院発足の話なども含まれ、情報メディア学会と社会情報学会に関係の深い歴史なども紹介されました。
■ 合同セッション閉会
シンポジウムの終了をもって合同セッションは閉会となり、社会情報学会会長木村忠正氏、情報メディア学会副会長長塚隆氏に閉会のご挨拶をいただきました。
■ ポスター発表
合同セッション終了後は情報メディア学会単独セッションとしてポスター発表が行われました。
全7タイトル:歩かない散歩と建物のない館 ―文学散歩・文学館・文学選集―(発表:岡野裕行氏(皇學館大学))、大学図書館のオンラインビデオによる利用教育の現状と課題(発表:長濱崚平氏(国際基督教大学図書館))、コレクションの多様性に関する評価指標と適用可能性の検討(発表:武田千佳氏(筑波大学))、学校図書館活用を促し・支える教員研修プログラムの開発 ―A特別支援学校の教員ニーズ調査をふまえて―(発表:野口武悟氏(専修大学))、講談社「人物資料」から専修大学「現代人物アーカイブズ」へ ~その歴史と現状~(発表:植村八潮氏(専修大学))、看護学生が臨床実習のケースレポート作成過程で体験した学術情報探索上の困難(発表:小野寺海帆氏(筑波メディカルセンター病院,前茨城県立医療大学))、日常的インターネットユーザである後期高齢者における健康情報探索の実態(発表:小橋結花氏(前茨城県立医療大学))の発表が行われ、前半にライトニングトーク、後半にはパラレルセッションでの各発表者の発表が行われました。
また、協賛会員発表として、文献レビューアプリ「BOOK MARRY」のご紹介(発表:日本事務器株式会社)を発表いただきました。
■ 単独セッション閉会
ポスター発表終了後には情報メディア学会単独での閉会が行われ、最優秀ポスター発表者(長濱崚平氏(国際基督教大学図書館) 「大学図書館のオンラインビデオによる利用教育の現状と課題」)の表彰および閉会の挨拶を三和義秀副会長よりいただき、研究大会は盛会裏に終了しました。
■ プログラム概要
10:15 | Zoom開場 |
10:30 | 開会挨拶 |
10:40 | 情報メディア学会・社会情報学会 合同企画セッション |
12:10 | 総会, 昼食 |
13:30 | 情報メディア学会・社会情報学会 合同企画セッション |
15:00 | 「合同セッション」閉会挨拶 |
15:15 | 情報メディア学会 単独セッション |
16:00 | ポスターディスカッション |
16:45 | 表彰式,「単独セッション」閉会挨拶 |
■ 基調講演「文系情報学の統合的協調にむけて」
西垣通氏(東京大学名誉教授,元情報メディア学会会長,元社会情報学会理事)
■ シンポジウム「社会情報と情報メディア ~図書館情報学を架橋に~」
パネリスト:
河井孝仁氏(東海大学)発表資料
長谷川幸代氏(跡見学園女子大学)発表資料
西田洋平氏(東海大学)発表資料
コメンテーター:
後藤嘉宏氏(筑波大学)コメント資料
進行:
河島茂生氏(青山学院大学)
■ ポスター発表
■ おわりに
この大会の企画と準備は,以下の会員をメンバーとする大会企画委員会が中心となって行われました.これらの方々の多大のご尽力に感謝致します.
[大会企画委員会]
委員長 千 錫烈 関東学院大学
委員 天野 晃 国立情報学研究所
委員 石川 敬史 十文字学園女子大学
委員 佐藤 翔 同志社大学
委員 下山佳那子 八洲学園大学
委員 新藤 透 國學院大學
委員 竹之内 禎 東海大学
委員 西田 洋平 東海大学
委員 長谷川幸代 跡見学園女子大学
委員 日向 良和 都留文科大学
大学図書館のオンラインビデオによる利用教育の現状と課題
◎長濱崚平(国際基督教大学図書館)
1. 最優秀ポスター発表受賞おめでとうございます。受賞について一言お願いいたします。
このような栄誉ある賞をいただき大変うれしく思います。発表を聞いてくださった皆様、投票いただいた皆様、このような場を提供してくださった学会事務局の皆様に御礼申し上げます。
2. どういった経緯で今回の研究を行うことになったのでしょうか? 経緯を教えてください。
私は大学図書館職員として、オリエンテーションやデータベース講習会といった利用教育を担当しています。以前は対面で実施をすることが多かったのですが、2020年初頭から始まった新型コロナウイルスの感染拡大により、しばらく対面での実施ができなくなりました。そこで、YouTube動画を用いて、遠隔で利用教育を提供することになりました。せっかく動画を作るなら、より効果的な動画にしたいと思い、良い利用教育動画の作り方に関する情報を探してみましたが、あまり見つけることができませんでした。それならば自分で研究して、良い利用教育動画の作り方を学ぼうと思い、今回の研究を行うことにいたしました。
3. ポスター発表の研究の概要について教えてください。
日本と米国の大学図書館が YouTube で公開している利用教育動画の評価を行い、両者の評価結果を比較しました。調査の結果、日本の動画には、「時間が長い」、「字幕を付与していない」、「図書館への問い合わせ方法を紹介していない」、「質問・発問・課題が少ない」、そして「大学の授業や課題に関わることに言及していない」という課題があることが示唆されました。
4. デザイン面などで工夫した点を教えてください。
余計な情報や画像を省き、とにかくシンプルにすることを心掛けました。そのこともあり、文字がポスター全体の大半を占めてしまったので、フォントの大きさや色、行間などを適度に変え、文字だけでもメリハリがあって読みやすくなるように工夫しました。
5. ポスター制作にあたっての苦労話やエピソードなどありましたら、教えてください。
実は学会に参加したのは今回が初めてで、今まで情報メディア学会だけではなく、他の学会にも参加したことがありませんでした。そのため、ポスター発表についても、発表はもちろん、見学をしたことすらありませんでした。右も左もわからず、Googleで「ポスター発表 方法」などと調べることから始めました。その後インターネットや図書館の本でポスター発表のノウハウを集め、見よう見まねで作り始めましたが、なにしろ自分が作っているものが本当に学会のポスター発表としてふさわしいものかわかりませんでしたので、不安でしかたがありませんでした。
6. ポスター発表時の会場の人からの反応はいかがでしたでしょうか?
Zoomでの発表だったため、発表中は参加者の皆様の表情が見えず不安でした。しかし、一通りの説明を終えた後には多くの方からコメントや質問をいただき、とりあえず反応をいただけたことに安心いたしました。様々な立場の方からご意見をいただき、大変有意義なポスターディスカッションとなりました。
7. ポスター発表の論文発表のご予定は?
まだ研究として粗い部分があると思いますので、残念ながら論文発表ができるほどの内容ではないと自己評価をしております。しかし、皆様からこのような形でご評価いただけたことを励みとし、ゆくゆくは情報メディア研究への論文投稿ができるよう、研究を重ねていきたいと思います。