第22回研究大会が開催されました
■ 大会報告
2023年7月15日(土)に、情報メディア学会第22回研究大会をハイブリッド開催いたしました。
都留文科大学 6号館(山梨県都留市田原3-8-1)およびインタラクティブなオンラインでの開催となりました。
全体進行は長谷川幸代氏(跡見学園女子大学)により行われました。
参加人数は、現地参加28名(会員19名、学生会員1名、非会員5名(内学生2名)、賛助会員3名)、オンライン参加14名(会員7名、非会員7名)でした。
■ 開会
角田裕之会長より開会挨拶をいただきました。
■ シンポジウム
シンポジウムでは「デジタルアーカイブのパースペクティブ」と題し、最初に司会者である日向良和氏(都留文化大学)よりシンポジウムのコンセプトの紹介をいただきました。
コンセプトの紹介では国立国会図書館のデジタルアーカイブのインパクトについて述べられ、博物館・大学図書館のアーカイブにも言及されました。
続いて登壇者である福島幸宏氏 (慶應義塾大学) 、阿児雄之氏(東京国立博物館)、齊藤有里加氏(東京農工大学)の紹介をいただきました。
■ 基調講演
基調講演として福島幸宏氏に「デジタルアーカイブとはどういう営為か -過去・現在・未来-」と題した講演をいただきました。
福島氏は最初にデジタルアーカイブの定義が明確でないことを述べ、現在主流であろう定義とご自身による定義について紹介されました。
続いて「デジタルアーカイブの過去」としていくつかの国内外のアーカイブ構想を「実験」段階と「閲覧させる」段階として整理するお考えを語っていただきました。
「デジタルアーカイブの現在」としては「利活用する」段階と「プラットフォーム構築」をすすめる段階として整理し、クリエイティブ・コモンズ等のライセンスやガイドラインの具体例を紹介いただきました。
「デジタルアーカイブの未来」としてはアーカイブにかかる法・ガイドラインの改定例、デジタルアーカイブ学会による「デジタルアーカイブ憲章」等の紹介をいただき、最後にあらためて博物館の理念である、有形および無形の遺産の研究・収集・保存・解釈・展示について、およびその課題について語っていただきました。
■ 事例報告(1)
一つ目の事例報告として阿児雄之氏に「デジタルアーカイブと技能獲得」と題した報告をいただきました。
阿児氏にはご自身の職場である東京国立博物館、都留文科大学におけるデジタルアーカイブにかかる技能獲得につき、授業・インターンシップ・担当者研修の例を紹介いただきました。
例としてジャパンサーチを利用したデジタルアーカイブ作成の実習、情報資料室でのインターンシップ、奈良文化財研究所での担当者研修を紹介いただきました。
■ 事例報告(2)
二つ目の事例報告として齊藤有里加氏に「デジタルアーカイブの活用と人材」と題した報告をいただきました。
齊藤氏にはご自身の職場である東京農工大学での学芸員過程を紹介いただきました。
齊藤氏の事例紹介は東京農工大学科学博物館での実習についてのご紹介で、こちらでもジャパンサーチ(およびiNaturalist)を利用したデジタルアーカイブ作成を行なっているというものでした。
■ ディスカッション
ディスカッションでは登壇者の3名および日向氏による活発な討議が行われ、会場からも積極的な意見・質問が見られました。
■ 総会
会員のみによる総会が行われ、こちらも現地およびオンラインによるハイブリッド開催となりました。
■ ポスター発表
ポスター発表では以下の6件の発表が行われ、2グループに分けた聴講者入れ替わり制のパラレルセッションがハイブリッドで行われました。
ポスター優秀賞には青山氏の「学校における児童・生徒の学習資料活用:市立図書館・学校司書の連携の効果」が選ばれました。
■ 協賛会員発表
日本事務器株式会社による協賛会員発表が行われました。
■ 図書販売
数年ぶりに会場での図書販売が行われ、株式会社樹村房、日外アソシエーツ株式会社による販売が行われました。
■ 閉会
長塚隆副会長に閉会の挨拶をいただきました。
■ プログラム概要
12:30 | 開場 |
12:45 | Zoom開場 |
13:00 | 開会あいさつ |
13:05 |
シンポジウム「デジタルアーカイブのパースペクティブ」 |
15:05 | 休憩 |
15:15 | 総会 |
16:00 | ポスター発表 ライトニングトーク 賛助会員ライトニングトーク |
16:40 | ポスターディスカッション |
17:30 | 表彰式,閉会あいさつ |
■ おわりに
この大会の企画と準備は,以下の会員をメンバーとする大会企画委員会が中心となって行われました.これらの方々の多大のご尽力に感謝致します.
[大会企画委員会]
委員長 千 錫烈 関東学院大学
委 員 天野 晃 国立情報学研究所
委 員 佐藤 翔 同志社大学
委 員 下山佳那子 八洲学園大学
委 員 新藤 透 國學院大學
委 員 西田 洋平 東海大学
委 員 長谷川幸代 跡見学園女子大学
委 長 日向 良和 都留文科大学
学校における児童・生徒の学習資料活用:市立図書館・学校司書の連携の効果
青山志織(塩尻市立図書館)
1. 最優秀ポスター発表受賞おめでとうございます。受賞について一言お願いいたします。
とても嬉しいです。発表が形になったのは私の力ではなく、市立図書館の継続的な支援と意欲的な活動を続ける学校司書の方々の尽力があってこそだと感じています。また、拙い発表を聞いてくださった皆様、親切に対応して下さった事務局の皆様に心から感謝申し上げます。
2. どういった経緯で今回の研究を行うことになったのでしょうか? 経緯を教えてください。
私は市立図書館の司書として、カウンター業務や児童サービスの仕事をしています。研究という分野は遠い存在だと思っていましたが、自分たちの行っているサービスが市民にどのような影響を与えているのか、図書館が市民の利益に値する存在になっているかを、司書自身が考えていく必要があると思い、研究をはじめました。注いだ力が成果になっているかどうかを見定める力があることが、司書としてより良いサービスを繋ぐ鍵になると感じています。
3. ポスター発表の研究の概要について教えてください。
塩尻市では、市立図書館と学校図書館の連携事業をおこなっています。そのなかで、学校司書から寄せられた貸出・調査依頼を元に、市立図書館の資料がどのように活用されているか考察しました。結果的に、小学校の授業やクラス活動において市立図書館の資料は継続的に活用されており、教科での利用も増加傾向にあります。ギガスクール構想や主体的・対話的で深い学びの推進など、学習の変化によって、市立図書館と学校図書館の連携はますます重要になると予想されます。
4. デザイン面などで工夫した点を教えてください。
夏らしくしよう!と思ってアイスクリームカラーにしました。バニラとイチゴと抹茶のイメージです。普段は子ども向けのチラシをつくっているので、可愛くなり過ぎないよう気を付けたつもりでしたが、貼りだした時に浮いていないかとちょっと焦りました。普段から色の配分と余白をしっかりとることを意識しています。賞をいただけてとても嬉しいです。
5. ポスター制作にあたっての苦労話やエピソードなどありましたら、教えてください。
ポスターセッションだけでなく、学会というものが初めてだったので、とても不安で緊張していました。学校や研究する機関に属していないため心配なことばかりでしたが、館長をはじめ、たくさんの方々に相談にのっていただき、とても助けられました。特に学会での発表を勧めて下さり、たくさん励まして下さった佐藤さんには感謝してもしきれません。
6. ポスター発表時の会場の人からの反応はいかがでしたでしょうか?
たくさん興味をもっていただけて、嬉しかったです。質問やご指摘を受けて、新しい視点や発見がたくさんありました。短い時間でしたが、ぐんと視界が広がったように感じます。準備不足で適切な回答できず反省も多いのですが、得難い貴重な体験であり、とても楽しい時間でした。はじめて参加させていただいた学会が、このメディア学会で本当に良かったです。
7. ポスター発表の論文発表のご予定は?
昨年度、認定司書の資格取得のために論文を書いたのですが、資格をとって終わりではなくどこかで意見をもらえる場に発表した方がよいとお言葉をいただき、今回のポスターセッションに参加させていただきました。また、論文にするには自分の力が足りないと思いますが、いつかチャレンジしてみたいです。